2023.09.15

航空機市場の動向と当社・航空機地上支援器材の取り組み

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当社の代表的な製品である航空機地上支援器材(GSE)の「トーバー」は、今年度、例年の10倍強の受注をいただいています。
この受注増は、航空機市場の動向とどのように関係しているのでしょうか?

 

納品前のトーバー、航空機をけん引するトーバー
※トーバーとは、航空機が動力を使わずに空港内を移動する際、けん引するトーイングカーに接続して使用する機材です。
(トーバー詳細については下記ページをご覧ください。)
ご依頼に応じた「オリジナル仕様トーバー」について〜知ってる?ホリグチの仕事 vol.1〜 (horiguchi-engi.jp)

回復基調にある航空機市場

この夏に参加した航空機関連のセミナーで得た情報を参考に、当社の取り組みについて紹介します。
今回参加したセミナーは、航空機や加工機を製造・販売する企業が主催されたもので、航空機産業の現状や展望については、概ね以下のような内容でした。

・2年半以上にわたって行われた入国制限措置が緩和され、航空機市場はコロナ禍前の2019年ほどに回復しているそうです。
・今後、順調に有償旅客数が増えていくとともに、貨物重量は3倍となり、国際市場も回復していくそうです。
・航空機のメンテナンスや設備投資も積極的になっており需要も高まっているそうです。

一方で、政府は「防衛力整備計画」を決定し、防衛力強化に向けて動いています。
その地盤を固めるために必要な「航空機用地上支援器材(GSE)」を扱う当社へ、新規製作や機材のメンテナンスの依頼が多くなってきています。

コロナ禍を経て、今後の航空機市場の課題

参加したセミナーの一つ、DMG森精機様の「DMG MORI テクノロジーフライデー」では、「航空機業界の最新動向」「航空機部品加工へのソリューション」がテーマになっていました。その一部を紹介します。

・グローバルに見ても航空機市場は活況を呈しており、2030年に向かい右肩上がりの市場である。
・Boeing/Airbusの集計によると機体の受注は順調に推移しており、今後も新しい機体が多く納入される計画になっている。
・2022年に納入された航空機は1,141機で、現在の受注残の機体は1万1,528機となっており、航空機市場がさらに大きな需要を持っていることを示している。

このように航空機業界への需要が高まる一方で、サプライチェーンにはいくつかの課題があるそうです。
【課題】
・コロナ禍による納期の遅れ
・為替、物価の変動リスク
・地政学的なリスク
・熟練工の退職と若手技術者の不足
・必要な生産技術力・製造能力の不足
・新規参入企業のJIS Q 9100に沿った品質管理の理解不足

これらの課題の中から、当社で対応可能な課題解決として、「航空機市場低迷期から回復期における部品供給力の不足」が考えられます。
この課題は、今後の航空機産業の発展にとって重要な要素であり、当社は積極的に取り組んでいます。具体的な取り組みを以下に紹介します。

当社の取り組み① 製造工程の見直しで生産スピードを短縮

生産技術力・製造能力を向上させるためには、生産スピードを上げる必要があります。
当社では、トーバーの大量受注において製造工程を改善し、効率化を行いました。
具体的な事例の一つは、加工工具の変更による、材料選定や加工、熱処理工程の見直しです。一つの製品に対して約3割程度の加工時間の削減に成功しました。

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当社の取り組み② 熟練技術の継承

熟練工のノウハウを円滑に引き継ぐため、当社では「マイスター制度」を実施しています。
卓越した技術や技能をもち、指導育成の熱意を有している人を認定し、定年後も引き続き勤務する社員を対象にした制度です。
これにより、若手技術者の技術強化を行っています。
また、大学や専門学校などの卒業生だけでなく、中途採用者に対しても積極的に採用活動を行っています。
これらの対策により、熟練工の技術を守り、若手技術者の強化をはかり課題に対し向き合っています。

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当社の取り組み③ 徹底した品質管理

航空宇宙及び防衛分野の製品を設計・製造・開発する企業に向けて、安全性・信頼性を向上させるための品質マネジメントシステム「JIS Q9100」を取得・運用しています。
これにより、航空宇宙及び防衛分野の品質に求められる機能を保ち、安全性の高い一定品質の製品・サービスを提供できる仕組みがあることを第三者機関から証明されています。
当社は、2009年にJIS Q9100を取得して以来、規定に基づいた品質管理を徹底しています。

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当社の取り組み④ 新たな製品開発

主力商品である「トーバー」や、航空機地上支援器材(GSE)である「ドーリー」「整備作業台」などの技術を、他製品に応用する検討を随時行っています。
「トーバー技術を空飛ぶクルマや鉄道車両のけん引に転用できないか?」などのお問い合わせもいただいており、新しい分野へも積極的に進出しています。
当社の技術を応用して製作した事例を一部紹介します。
・超小型月面着陸船のドーリー
・衛星横転装置
・トレーラー用の作業台
※ドーリーとは、対象物を組立・保管・移動させるもの

 

まとめ

新型コロナウィルス収束を踏まえ、大きく動き出した航空機市場で、トーバー以外の航空機地上支援器(GSE)である「ジャッキシステム」「エンジンスタンド」「メンテナンスワークスタンド」「ホイールメンテナンス」などの受注も増えており、航空機市場の需要を実感しています。
今後、ますます重要となる航空宇宙及び防衛分野。その足元を固める製品を扱う当社として、さまざまな課題に向き合い、解決することで航空機産業の発展に尽力していきます。