2025.7.14

工場の熱中症対策【2026年版】義務化・罰則・WBGT基準値まで 安全衛生担当者が今やるべきこと

2025年6月、改正労働安全衛生規則の施行により、職場の熱中症対策は罰則付きの「義務」になりました。続く2026年3月には、厚生労働省が「職場における熱中症防止のためのガイドライン」を策定。義務として最低限実施すべき事項と、より実効性を高めるための望ましい取り組みが整理され、職場に求められる熱中症対策がより明確になりました。

働く人の熱中症は増え続けています。2025年の死傷者数は1,803人(確定値)と過去最多。業種別では製造業が最も多く、「屋内の工場だから大丈夫」とは言えない状況です。

本記事では、工場を持つ企業の安全衛生担当者・現場管理者の方に向けて、「何が義務で、何が推奨か」「自社は対象か」「現場で何をすればよいか」を整理します。細かな条文や統計の全文は本文に詰め込まず、要点だけを押さえたうえで、それぞれ厚生労働省の一次資料へのリンクを示す構成にしました。確認したい箇所だけ原文にあたれるようになっています。

📅 2026年版での主な更新点

  • 2026年3月策定の新ガイドラインに対応(義務と推奨の二層で再整理)
  • 労災統計を2025年(確定値)まで更新
  • WBGT基準値の早見表と補助金情報を2026年度版に更新
  • 巻末に、自社の対応状況を○×で点検できる「48項目セルフチェックリスト」(無料)を追加

まず結論:2026年、工場の熱中症対策でやるべきこと

時間のない方のために、全体像を先に示します。工場の熱中症対策は、「義務」(改正安衛則)と「推奨」(新ガイドライン)の2つに分けて考えると分かりやすくなります。

区分 根拠・時期 やるべきこと
【義務】罰則あり 改正労働安全衛生規則 第612条の2(2025年6月1日施行) ① 熱中症の疑いをすぐ報告できる体制を整えて周知する
② 重篤化を防ぐ手順(作業からの離脱→身体の冷却→救急要請)と緊急連絡先を作業場ごとに定めて周知する
【推奨】望ましい措置 職場における熱中症防止のためのガイドライン(2026年3月18日策定) WBGT(暑さ指数)の実測と基準値にもとづく管理/遮熱・断熱・換気など設備によるWBGT低減/暑熱順化・健康管理・教育

義務の対象になるのは、次の両方に当てはまる作業です。

  • 環境条件:WBGT28℃以上、または気温31℃以上
  • 時間条件:連続1時間以上、または1日4時間超

環境・時間とも、条件内の2つの数値はどちらか一方を満たせば該当します。屋内外を問わず、業種や企業規模の限定もありません。夏場の工場では、空調が届きにくいエリアや炉・乾燥炉・成形機の近くの作業が該当しやすくなります。

熱中症対策を進める際の5つのポイント

  1. WBGTを実測する — 熱源の近くや風通しの悪いエリアを測り、対象作業を洗い出す
  2. 報告体制を整える(義務)— 誰が・どう報告するかをルール化し、派遣・協力会社を含む全員に周知
  3. 重篤化防止の手順を定める(義務)— 離脱→冷却→救急要請の手順と連絡先を作業場ごとに掲示
  4. 休憩環境と水分・塩分補給を整える — 冷房の効いた休憩場所、経口補水液や塩飴の備え付け
  5. 設備でWBGTそのものを下げる — 遮熱・断熱・換気・空調効率化による根本的な環境改善

自社がどこまでできているかは、巻末の48項目セルフチェックリストで○×点検できます。

熱中症対策の義務化はいつから?改正安衛則と新ガイドラインの読み分け

2025年6月施行・改正安衛則の義務は2つだけ

改正労働安全衛生規則(第612条の2)が事業者に義務付けたのは、突き詰めると次の2点です。

  1. 報告体制の整備・周知 — 作業者本人が自覚症状を感じたとき、あるいは周囲が熱中症の疑いに気づいたときに、ためらわず報告できる体制をあらかじめ整え、関係者に知らせておくこと。
  2. 重篤化防止の手順の整備・周知 — 作業からの離脱、身体の冷却、医師の診察や救急要請といった措置の内容・手順・緊急連絡先を作業場ごとに定め、関係作業者に周知しておくこと。

違反した場合は、労働安全衛生法第119条により6か月以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金の対象となり得ます。法人にも罰金が科され得る両罰規定(第122条)付きです。実務上はいきなり処罰されるのではなく労働基準監督署の指導・是正勧告が先行するのが通例ですが、義務である以上、未整備のまま夏を迎えるリスクは小さくありません。

なお、この2つの義務はどちらも「体制と手順を紙に落として、全員に知らせておく」ことが核心です。大がかりな投資をしなくても着手できます。

「体制と手順の整備」と聞くと身構えますが、求められているのは分厚いマニュアルではありません。①誰に・どうやって報告するか(例:職長へ口頭と無線、不在時は事務所へ)、②倒れた人が出たらどう動くか(例:作業から離す→冷却場所へ→責任者へ連絡→症状に応じて救急要請)、③緊急連絡先はどこか――この3点が作業場ごとに1枚の掲示物で示され、全員が知っている状態がゴールです。逆に、立派な規程集があっても現場に周知されていなければ、義務を満たしたとは言えません。

出典:条文・通達の全文や詳細な解説は、厚生労働省のポータルサイト「職場における熱中症予防情報」にまとまっています(2026年7月参照)。

2026年3月策定・新ガイドラインは「実効性」を求めている

2026年3月18日に策定された「職場における熱中症防止のためのガイドライン」は、義務の上に重ねる推奨措置の体系です。最大のテーマは重篤化の防止。あわせて、次のような実務が「望ましい措置」として整理されました。

  • WBGT(暑さ指数)を作業場所で実測し、基準値と照らして休憩・作業可否を判断する
  • 遮熱・断熱・通風・冷房などで作業場のWBGTを下げる(作業環境管理)
  • 7日以上かけた暑熱順化、連休明けの再順化、身体作業強度に応じた負荷の調整(作業管理)
  • 日常の体調確認・基礎疾患への配慮(健康管理)と、管理者・職長・作業者への教育

体制面では、事業場の規模に応じて衛生管理者(50人以上)や安全衛生推進者(50人未満)を中心に据え、現場の職長などに対策を担わせる場合は「熱中症予防管理者」を選任することが推奨されています。

出典:ガイドラインの本文・別表は厚生労働省の検討会報告書ページから確認できます(2026年7月参照)。

夏季は国の重点期間:STOP!熱中症 クールワークキャンペーン

厚生労働省は毎年5月1日〜9月30日を「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」期間としています。詳細はキャンペーンの実施案内を参照してください。

データで見る:なぜ今、対策が急がれるのか

職場での熱中症による死傷者数(休業4日以上)は、2025年に1,803人(確定値)となり、統計開始以降の最多を更新しました。業種別に見ると製造業が最多です(2024年確定値235人、2025年確定値365人と、いずれも全業種で1位)。

一方で、死亡者数は前年の31人から19人へと大きく減少しました。義務化と各職場の体制整備が、重篤化の防止に効いたとみられます(厚生労働省公表資料より)。この数字は「体制と手順の整備」という一見地味な対策が、実際に命を守ることを示しています。

なぜ製造業に被災が集中するのでしょうか。第一に、炉・乾燥炉・成形機といった熱源が屋内にあり、外気温以上の熱負荷が生まれやすいこと。第二に、建屋が日射で熱を蓄え、夕方以降も室温が下がりにくいこと。そして第三に、「屋内だから熱中症は屋外作業の話」という思い込みが対策を遅らせることです。屋外と違って天候による作業中止の判断が働きにくく、同じ環境に長時間とどまり続けやすいことも、屋内工場特有のリスクといえます。

年齢構成にも注目してください。20代から60代前半まで、熱中症による死傷者は幅広い年代で発生しており、特定の年代だけがリスクを負っているわけではありません。「若いから大丈夫」「経験があるから大丈夫」という考えは、統計とは一致しません。暑さに体が慣れていない配属直後や連休明けは、年齢を問わず誰もがリスクを抱えます。統計が示す教訓はシンプルです。発生をゼロにする前に、まず「重篤化させない仕組み」を整えることが命を守る最短ルートであり、改正安衛則の義務が報告体制と重篤化防止の2点に絞られているのは、この構造を踏まえたものです。

出典:厚生労働省「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」。年次の確定値・速報値は職場における熱中症予防情報から確認できます(2026年7月参照。公開時点の最新値に合わせて更新します)。

WBGT(暑さ指数):基準値の考え方と現場での測り方

なぜ「気温」ではなく「WBGT」なのか

WBGT(湿球黒球温度)は、気温に加えて湿度と輻射熱を織り込んだ指標です。工場では炉や成形機からの輻射熱、蒸気による湿度上昇など、気温計に表れない熱負荷が大きいため、気温だけで判断すると危険側に誤ります。義務の対象判定(WBGT28℃以上)も、ガイドラインの管理も、このWBGTが物差しになります。

作業強度別のWBGT基準値(早見表)

基準値は一律ではなく、身体作業強度と暑熱順化(暑さに身体が慣れているか)で変わります。主な区分の目安は次のとおりです。

区分 工場の作業例 順化者(℃) 非順化者(℃)
0 安静 監視室での計器監視 33 32
1 低代謝率 軽い組立・目視検査・フォークリフト運転 30 29
2 中程度代謝率 ライン組立・中量物の運搬・機械操作 28 26
3 高代謝率 重量物運搬・溶接・鋳物のバリ取り 26 ※ 23 ※
4 極高代謝率 解体作業・階段昇降を伴う重量物運搬 25 20

※ 区分3・4は気流(風)の有無で値が1〜2℃変わります(本表は簡易値。出典:厚生労働省ガイドライン別表・JIS Z 8504準拠)。溶接・鋳造・炉前は「高い作業強度+輻射熱+防護具」が重なる、最も厳しく管理すべき作業です。

見落としやすいのが「非順化者」の扱いです。作業前の1週間、毎日その暑さにさらされていなかった人は非順化者として、より低い基準値を当てはめます。連休明けや新規配属の直後が典型です。

表の使い方を例で示します。ライン組立が中心の工場なら、順化済みの作業者は「区分2・28℃」が目安です。同じラインでも、連休明けの初日は非順化者として「26℃」で見る。溶接工程だけは「区分3・23〜26℃」で別管理にする――このように工程と時期の組み合わせで基準値を使い分けるのが実務的な運用です。

防護服・つなぎ作業は「着衣補正」を忘れずに

WBGT基準値は、通気性のある一般的な作業服を想定した値です。防護服や溶接用保護具など、熱がこもりやすい服装で作業する場合は、実測したWBGT値に着衣の種類に応じた補正値を加えてから基準値と比較します。測定値をそのまま使うと、実態より安全側に見誤ってしまうためです。炉前作業で防護具を着用するケースでは、「高い作業強度で基準値が低い」うえに「着衣補正で実効のWBGTが上がる」という二重の厳しさになります。

区分ごとの詳しい基準値や着衣補正については、「職場における熱中症防止のためのガイドライン」(PDF)をご確認ください。

基準値を超えたときの運用

基準値を超えたら、直ちに全作業を止めるという運用ではなく、超過の程度に応じて休憩を増やし、大幅に超える場所では作業をしないのが基本です。ガイドラインの目安では、超過1℃なら1時間あたり15分、2℃なら30分、3℃なら45分程度と、休憩を段階的に延ばします。それ以上超える場所では、作業中止が望ましいとされています。

裏を返せば、遮熱・断熱・換気でWBGTを基準値の内側に下げられれば、休憩を増やさず作業を続けられるということです。これが後述するアイテム対策の狙いになります。

暑さ対策は「原因」から考えるのが基本

工場の熱中症対策では、まず暑さの原因を特定し、その原因に応じた対策を講じることが重要です。一般的には、次のような流れで検討します。

①発生源対策
設備や屋根などから発生・侵入する熱を抑える。

②冷房・換気などによる環境改善
空調設備や換気設備を活用し、作業空間全体の温熱環境を改善する。

③設備の効率化
空調設備を効率よく運転できるよう改善し、快適な環境を維持するとともに、エネルギー消費の低減を図る。

もちろん、工場によってはこれらを組み合わせて対策を行うケースも少なくありません。

重要なのは、「どのアイテムを導入するか」ではなく、「何が暑さの原因になっているか」を把握し、それに合った対策を選ぶことです。

暑さの原因から選ぶ:工場の熱中症・暑さ対策に効く5つのアイテム

ひとくちに「工場が暑い」と言っても、その原因は現場ごとに異なります。屋根や外壁が日射で熱を持つ工場もあれば、炉や成形機などの設備から発生する輻射熱が大きな要因となっている工場、空調能力が不足している工場、換気が不十分で熱気がこもる工場もあります。

そこで本記事では、暑さの原因ごとに適した対策を選べるよう、堀口エンジニアリングが取り扱う5つのアイテムを表形式で整理しました。

それぞれのアイテムについて、向いている工場、期待できる効果、導入の流れ、費用の考え方、よくある疑問までを統一した形式でご紹介します。まずは自社の工場が「どの原因に当てはまるのか」を確認しながら読み進めてみてください。

対策設備フローチャート

以下、それぞれのアイテムがどんな工場に向くのか、順に見ていきます。原因が複数重なっている場合は、組み合わせることで相乗効果が生まれます。

①発生源対策

【クールサーム(高機能遮熱塗料):屋根/外壁の輻射熱を断つ】

(1) 概要

クールサームは、NASAが開発した特殊セラミックを応用した高機能遮熱塗料です。工場の屋根や外壁に塗布することで、熱を「反射」「放散」「断熱」する3つの効果により、夏場に建屋を灼く輻射熱を外部へ跳ね返し、工場内部への熱の透過を抑えます。空調で室内の熱を「下げる」のではなく、そもそも熱を「入れない」発想の対策です。

(2) 向いている工場

  • 鉄骨造/スレート屋根などで、夏に屋根・天井・外壁が触れないほど熱くなる工場
  • 空調を入れても、午後になると室温が上がってしまう工場
  • WBGT基準値の超過要因が「輻射熱」である作業環境(炉前作業がなくても、建屋自体の灼けが原因のケース)

(3) 期待できる効果

  • 屋根・外壁からの輻射熱をシャットアウトし、工場内部への熱侵入を根本から抑制
  • 空調効率の向上による電気代の削減
  • 塗膜は10年以上の耐久性

当社の自社工場でも導入実績があり、「塗布した壁とそうでない壁では、触れた際の温度差が歴然」「エアコンの効きが格段に良くなった」「以前のムッとした暑さが和らいだ」といった効果を確認しています。

(4) 導入事例

堀口エンジニアリングの自社工場(成田工場)に実際に施工し、温度低下をデータで確認しています。詳細は自社工場での熱中症対策の実施記事もご覧ください。

クールサーム施工後の工場屋根(遮熱塗装)

クールサーム施工前後の外気温・室温の実測比較グラフ(堀口エンジニアリング成田工場)

(5) 導入の流れ(4ステップ)

  1. 現状ヒアリング:屋根・外壁の材質、面積、現状の室温・輻射熱の状況を確認 ※(必要に応じて現場確認も可能です)
  2. 見積・提案:塗布面積に応じた費用と、期待される効果の目安をご提案
  3. 施工:外壁・屋根への塗装(工場の稼働を止めずに施工できるケースが多い)
  4. 効果確認:施工後の室温・体感の変化を確認

(6) 想定費用・回収期間の考え方

費用は塗布面積で決まり、空調費の削減分で投資回収していくのが基本的な考え方です。屋根・外壁面積が大きく空調稼働時間が長い工場ほど、削減効果が出やすく回収も早まります。

(7) よくある誤解

  • 「夏の晴れた日だけ効果があるのでは?」 → 遮熱塗料は日射のある条件で最も効果を発揮しますが、空調負荷の低減は夏季を通じて継続します。
  • 「塗料の臭いや工事の粉塵が製品に影響しないか」(食品工場など) → 施工時期・養生・塗料の種類で配慮が可能です。食品工場では事前に施工条件をご相談ください。

【えこきーぱー(着脱式断熱ジャケット):設備の排熱を抑えて雰囲気温度を下げる】

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(1) 概要

えこきーぱーは、工場内の設備や温熱機器に繰り返し使用できる断熱ジャケットです。バルブ・フランジ・熱交換器・射出成形機・乾燥炉・連続炉・溶解炉などの高熱を発する機器に着脱式のカバーを取り付け、機器から放たれる輻射熱を抑えることで、室内の雰囲気温度の上昇を抑えます。設備の排熱が暑さの主因になっている工場に効く対策です。空調機器が稼働している建屋内の温度低下が期待できます。

(2) 向いている工場

  • 炉・成形機・乾燥炉など、高温の設備が稼働しており、その周囲が局所的に暑い工場
  • 配管・バルブ・フランジなどの裸の高温部があり、火傷・熱中症のリスクがある現場
  • 溶接/鋳造/炉前など、輻射熱と高い身体作業強度が重なり、WBGT基準値が最も厳しくなる作業(区分3〜4+輻射熱)の必要な現場

(3) 期待できる効果

  • 高温機器による火傷・熱中症のリスク低減
  • 輻射熱を抑えることで室内温度が低下し、作業環境が快適化
  • 放熱抑制による電気・ガス・重油などのエネルギー削減
  • 各種温度帯に合わせた特殊加工ガラスシートを使用(アスベスト未使用、防音・遮音効果も期待)

着脱式のため点検時に容易に取り外せ、従来の解体・再施工が必要な保温材と比べてメンテナンス性に優れます。

(4) 導入の流れ(4ステップ)

  1. 現状ヒアリング:高温設備の種類・表面温度・周囲のWBGTを確認 ※(必要に応じて現場確認も可能です)
  2. 採寸・提案:対象機器に合わせたジャケットの設計と期待される効果の目安をご提案
  3. 取り付け:着脱式ジャケットを設置(稼働を大きく止めずに対応できるケースが多い)
  4. 効果確認:周囲温度・体感・省エネ効果を確認

(5) 想定費用・回収期間の考え方

費用は対象設備の数・サイズに応じて決まります。放熱抑制によるエネルギー削減分と、作業環境改善(生産性・安全性向上)の両面で投資回収を考えるのが妥当です。

(6) よくある誤解

  • 「熱源にカバーをすると、逆に機械内部に熱がこもって故障や性能低下につながらないか」 → えこきーぱーは設備の正常な放熱・冷却を妨げない設計が前提です。対象機器ごとに適否を判断するため、現場調査で確認します。
  • 「断熱材は一度施工すると点検時に外せず不便では?」 → 着脱式のため、点検・メンテナンス時に容易に取り外せる点が従来の保温材との大きな違いです。

②環境改善

【大規模換気システム(工場用大型換気扇)|こもった熱・湿気・臭気を一掃する】

(1) 概要

広大な工場空間を空調で均一に冷やすのは困難で非効率です。大規模換気システムは、熱気・臭気・ヒューム(煙)・粉塵を強制換気で外部へ排出し、工場内に効率的な空気の流れをつくる設備です。工場の形状や熱源の位置に合わせて換気扇を最適に配置することで、空気の滞留を防ぎ、工場全体で風を感じられる環境を実現します。

(2) 向いている工場

  • 天井が高く広大で、空調だけでは熱・湿気・臭気がこもってしまう工場
  • 溶接ヒュームや粉塵が滞留し、空気環境の改善が必要な工場
  • 局所冷房と組み合わせて、生産性と安全を両立させたい工場

(3) 期待できる効果

  • 温度・湿度・有害物質濃度の低下による作業環境の改善
  • 空気の入れ替えによる集中力向上→生産性向上・エラー率低減、感染症対策
  • 堀口の自社工場では、導入後に継続計測したところ「工場内の温度・湿度ともに顕著な低下」を確認。社員からも「工場全体に熱がこもっている感じがなく、常に風が感じられるので作業しやすくなった」との声

(4) 導入事例

堀口エンジニアリングの自社工場に導入し、温度・湿度の顕著な低下と作業性向上を確認しています。

大規模換気システムの屋根排気フード(堀口エンジニアリング自社工場)

壁面に設置した工場用大型換気扇

(5) 導入の流れ(4ステップ)

  1. 現状ヒアリング:工場の広さ・天井高・熱源位置・空気の滞留状況を確認 ※(必要に応じて現場確認も可能です)
  2. 設計・提案:最適な機種・設置台数・配置を設計し、想定効果を提示
  3. 設置工事:換気扇の設置・配置(局所冷房との組み合わせも提案)
  4. 効果確認:温度・湿度・風の体感の変化を確認

(6) 想定費用・回収期間の考え方

費用は工場規模・設置台数で決まります。空調と異なり広大空間を効率的に改善できるため、空調増設より低コストで環境改善を図れるケースがあります。

(7) よくある誤解

  • 「外の熱い空気を取り込むだけで、涼しくならないのでは?」 → こもった熱気・湿気・有害物質を排出し、空気の滞留を解消すること自体に意味があります。輻射熱・排熱対策(クールサーム・えこきーぱー)と組み合わせると、より体感が改善します。
  • 「スポットクーラーを多数置く方が安いのでは?」 → スポットクーラーは局所には有効ですが、室外機の排熱で工場全体の温度を上げてしまう場合があります。広大空間の根本的な空気環境改善には換気システムが適します。
  • 「粉じんを建屋外に排出するのは近隣の環境に良くないのでは?」→ 粉じんの排出を抑制するフィルターの設置も可能です(換気効率は幾分低下するが空気の循環は確保される)。

③設備の効率化

【Miラクルコイル(ミラクルコイル)|空調の冷却効率を向上/電力消費増を抑えるエコ商材】

(1) 概要

Miラクルコイルは、冷凍機や空調機の省エネ装置です。既存設備の液配管に取り付けるだけで、CO2・消費電力を10%〜30%削減できます。コンデンサー(凝縮器)後の液配管に設置すると、冷媒が遠心力で気液二層状態となり、外側の液層部から効率よく放熱できるようになります。これにより冷媒の液化効率が上がり、冷凍能力が向上、コンプレッサーの稼働時間が短縮されます。エアコン導入により暑さ対策を施している工場の省エネに有効です。

(2) 向いている工場

  • 既存の空調機・冷凍機があるが、夏場に冷却能力が足りず室温が下がりきらない工場
  • 空調の電気代が経営課題になっている工場
  • 設備を入れ替えずに、低コストで空調効率(=暑熱緩和)を改善したい工場

(3) 期待できる効果

  • CO2・消費電力を10%〜30%削減
  • 冷却効率の向上により、設定温度を上げても快適性を維持しやすくなる
  • 既存設備を活かした低コストでの効率改善
  • 電気工事は一切不要、メンテナンスも不要

(4) 導入事例

化学メーカープラント
 空調機への設置……7台
 チラーへの設置……3台

空調機の液配管に取り付けたMiラクルコイル

(5) 導入の流れ(4ステップ)

  1. 現状ヒアリング:既存空調機・冷凍機の種類、消費電力、配管状況を確認 ※(必要に応じて現場確認も可能です)
  2. 提案:適合機種の確認と期待される効果の目安をご提案
  3. 取り付け:液配管へのコイル設置(電気工事不要)
  4. 効果確認:消費電力・冷却能力の変化を確認

(6) 想定費用・回収期間の考え方

電気代削減という分かりやすいリターンがあるため、削減額から回収期間を逆算しやすいのが特徴です。空調の稼働時間・消費電力が大きい工場ほど回収が早まります。

(7) よくある誤解

  • 「後付け製品で既存エアコンに負荷がかかり、故障やメーカー保証失効につながらないか」 → 液配管への設置で空調機本体に手を加えない構造です。保証への影響は機種により異なるため、現場調査時に確認します。
  • 「省エネ製品なのに暑さ対策になるのか」 → 冷却効率が上がることで空調が効きやすくなり、結果として室温が下がりやすくなります。また工場全体の電力消費量を抑えるための選択肢としてもご提案しています。

【ENEDUCE(エネデュース)|エアコンの性能を回復させて空調効率を改善/暑さ対策の効果を補完】

(1) 概要

ENEDUCE(エネデュース)は、空調電力低減システムです。国産自動車ディーラー等でも採用されている「鉄が鉄を補修する」金属表面修復技術を応用し、コンプレッサー内部の金属面の傷や摩耗を補修することで、低下したエアコンの性能を回復させます。経年で内部部品が摩耗しクリアランスが広がると、本来の冷却能力が出ず稼働時間が延びて消費電力が増えます。エネデュースはこの傷・摩耗を修復し、冷却効率を回復させることで稼働時間を短縮し、消費電力を削減します。Miラクルコイルと同じく「効きが悪くなった空調」の暑熱緩和に効く対策です。

(2) 向いている工場

  • 導入から年数が経ち、エアコンの効きが新品時より落ちてきた工場
  • 空調を入れ替える予算はないが、性能を回復させて夏を乗り切りたい工場
  • メーカー・型式を問わず、1台から省エネ・性能回復を図りたい工場

(3) 期待できる効果

  • コンプレッサー内部の修復による冷却効率の回復→稼働時間短縮→消費電力削減
  • メーカー・型式を問わず導入可能
  • 専用注入器でエネデュース液を冷媒の注入ポートから入れるだけの簡単施工
  • 施設全体に導入する場合は、年間の消費電力削減効果を予測して提案

(4) 導入の流れ(4ステップ)

  1. 現状ヒアリング:対象エアコンの種類・台数・経年・現状の消費電力を確認 ※(必要に応じて現場確認も可能です)
  2. 提案:施設全体での年間消費電力削減効果を予測して提示
  3. 施工:専用注入器でエネデュース液を注入(メーカー・型式問わず1台から対応)
  4. 効果確認:消費電力・冷却能力の変化を確認

ENEDUCE施工の様子(コンプレッサーへのエネデュース液注入)

(5) 想定費用・回収期間の考え方

こちらも電気代削減が直接のリターンとなるため、削減額から回収期間を見積もりやすいのが特徴です。台数が多く稼働時間の長い施設ほど効果が積み上がります。

(6) よくある誤解

  • 「液剤を入れるだけで本当に性能が回復するのか」 → 自動車ディーラー等でも採用される金属表面修復技術を応用したもので、摩耗で広がったクリアランスを補修して効率を回復させる仕組みです。
  • 「Miラクルコイルとどう使い分けるのか」 → Miラクルコイルは放熱効率を高める装置、エネデュースは劣化したコンプレッサー性能を回復させる施工です。空調の状態に応じて単独でも併用でも提案します。

5つのアイテム、どれから検討すべきか

出発点はあくまで「自社の暑さの原因」です。輻射熱・設備排熱・空調効率・換気不足のどれが主因か、複数が重なっていないか。冒頭の一覧表で当たりをつけ、WBGTの実測で裏づけを取ってから優先順位を決めると、無駄のない投資になります。

導入の進め方は5つのアイテムでほぼ共通です。まず現状ヒアリング、次に提案、そして施工・設置へ進み、最後に効果を確認します。多くの設備は工場の稼働を大きく止めずに施工できますが、生産計画との調整が必要な場合もあるため、夏本番の前――春までに検討を始めるのが理想的です。

組み合わせの考え方にも触れておきます。たとえば「屋根の輻射熱+設備排熱」が重なる工場なら、クールサームで建屋への熱侵入を抑えつつ、えこきーぱーで熱源を断熱する、という外と内からの両面作戦が有効です。「空調の効きが悪く、空気もこもる」なら、大規模換気で空気の流れをつくってからMiラクルコイルやENEDUCEで空調効率を上げると、それぞれの効果が引き立ちます。単品の導入で終わらせず、原因の構図に合わせて優先順位をつけることが、投資対効果を最大化するコツです。

参考:アイテム導入に活用できる補助金【2026年度】

ここまで、工場の暑さ対策に活用できる5つのアイテムをご紹介しました。

設備の導入には一定の費用がかかりますが、導入するアイテムや事業内容によっては、国や自治体の補助金を活用できる場合があります。

ここでは、工場の暑さ対策や省エネアイテムの導入で活用が検討できる代表的な補助金をご紹介します(金額・要件は年度で変わるため、申請前に必ず公式ページでご確認ください)。

制度 対象の目安 上限額
業務改善助成金(厚生労働省) 賃上げとあわせて生産性向上に資する設備投資を行う中小企業 年間上限600万円
エイジフレンドリー補助金(厚生労働省) 60歳以上の労働者を雇用する中小企業の熱中症対策など 上限100万円

2つの制度は狙いが異なります。業務改善助成金は「賃上げと生産性向上」がセットの制度で、空調設備や遮熱施工など比較的大きな設備投資と組み合わせやすいのが特徴です。一方のエイジフレンドリー補助金は高年齢労働者の安全確保が目的で、休憩設備の整備など小回りの利く対策に向きます。自社の従業員構成と投資規模から、どちらの土俵に乗るかを先に決めると、申請準備がスムーズです。

このほか、自治体独自の支援制度が使える地域もあるため、所在自治体の情報も調べておくと漏れがありません。

共通の注意点はひとつ。交付決定前に発注・購入・着工した費用は対象外です。必ず「申請→交付決定→着手」の順で進めてください。全体の流れは、①公式ページで当年度の要件・受付期間を確認→②見積・計画書を用意して申請→③交付決定→④発注・施工→⑤実績報告、の5段階です。受付は予算に達し次第終了する場合が多いため、夏に間に合わせたい場合は春先からの準備が確実です。

工場の熱中症対策のよくある質問

Q1. 熱中症対策はいつから義務になったのですか?罰則はありますか?

2025年6月1日施行の改正労働安全衛生規則(第612条の2)で、①報告体制の整備・周知、②重篤化を防止する手順の整備・周知の2点が義務になりました。違反は労働安全衛生法第119条により6か月以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金の対象となり得て、法人にも罰金が科され得ます。実務上はまず監督署の指導・是正勧告が入るのが通例です。とはいえ義務である以上、体制の整備を後回しにする理由にはなりません。

Q2. うちの工場は義務の対象ですか?屋内でも当てはまりますか?

「WBGT28℃以上または気温31℃以上」の環境で、「連続1時間以上または1日4時間超」行う作業が対象です。屋内外は問いません。むしろ工場のような屋内は熱がこもりやすく、機械や炉の排熱が加わるため、屋外よりWBGTが高くなることもあります。実際、業種別の死傷者数は製造業が最多です。空調の届きにくいエリアや熱源の近くをWBGT計で実測し、対象作業を洗い出すことが第一歩になります。判定に迷う場合は「暑い時期に、その場所で1時間以上続く作業があるか」から逆引きすると、対象候補を素早く洗い出せます。

Q3. 派遣社員や構内協力会社の作業者も、工場側が対策すべきですか?

同じ作業場で働く全員を対象に考えてください。派遣社員については、実際の作業環境を管理しているのは派遣先の工場なので、休憩場所の提供や報告体制への組み込みは工場側が担う部分が大きくなります。構内の協力会社も、報告体制や緊急時手順の周知から取り残さないことが重要です。短期就労やスポットワークの作業者は、暑さに慣れていると確実に分かる場合を除き「非順化者」として扱い、より低い基準値と長めの休憩を適用するのが安全です。

Q4. 食品工場の暑さ対策では、何に気をつけるべきですか?

食品工場では衛生管理の観点から、汗の製品への落下・混入を防ぐことが絶対条件です。吸汗速乾性のインナーやヘッドキャップ、リストバンドの活用が推奨されます。ただしこれらは対症療法にすぎません。根本的には、空調や換気で従業員が過度に汗をかかない室温・湿度を維持することが、品質管理と労働安全衛生の両面から重要です。なお遮熱塗料などの工事も、水性塗料を選び養生を徹底すれば、生産ラインを止めずに実施できる場合があります。

Q5. 空調服などの対策グッズだけでは不十分ですか?

空調服・ネッククーラー・冷却ベストなどのグッズは即効性のある有効な手段で、支給を推奨します。ただしグッズは「人」を冷やすもので、作業環境のWBGTには影響しません。義務の対象作業かどうかの判定も環境側の数値で決まるため、グッズだけで対策を完結させることはできません。遮熱・換気などの環境改善を土台に、グッズで補う組み合わせが基本です。支給する場合は、バッテリーの管理や火気の近くでの使用可否などの着用ルールもあわせて決めておくと現場が迷いません。

Q6. スポットクーラーをたくさん置くほうが安上がりではないですか?

スポットクーラーは局所対策として有効ですが、本体からの排熱で室内全体はむしろ暖まりやすく、増設するほど電気代もかさみます。「工場全体が暑い」「輻射熱が強い」といった根本原因には届きにくいのが弱点です。外からの熱侵入や設備排熱を抑えて建物全体の温度を下げたうえで、必要な場所にスポット冷却を併用するのが、費用対効果の高い組み合わせです。

Q7. 対策には結局いくらかかりますか?小規模な工場でも同じ対応が必要ですか?

義務(報告体制・重篤化防止手順)は企業規模を問わず適用されますが、この2つはルールを書面にして周知すれば足りるもので、費用はほとんどかかりません。小規模工場なら、報告ルールを紙1枚にまとめ、体調不良時の手順を作業場に掲示するところから始めれば義務の核心は押さえられます。設備投資は、建物構造・熱源・既存空調の状態で必要な組み合わせが大きく変わるため一概には言えませんが、「効果が大きく投資が小さいところから段階的に」が原則です。費用を考える順番としては、①まず費用のかからない体制整備と運用改善、②次に補助金の適用可否、③そのうえで設備投資の優先順位、という三段構えにすると整理しやすくなります。

Q8. 結局、明日から何をすればよいですか?

本文で述べた5ステップ(WBGT実測→報告体制→重篤化防止の手順→休憩・補給環境→設備による環境改善)のうち、文字どおり明日できるのは朝礼での周知です。「体調がおかしいと思ったら、本人が大丈夫と言っても必ず報告する」――このルールを口頭で共有するだけで、義務の柱である報告体制の運用が始まります。並行してWBGT計を手配し、実測で対象作業を洗い出せば、残りの整備は順番に進められます。自社の現在地は、巻末の48項目セルフチェックリストで○×点検してみてください。

まとめ:義務を最短で満たし、「作業を止めない工場」へ

2026年の職場・工場の熱中症対策を、あらためて「義務」と「推奨」の二層で振り返ります。

  • 義務(改正安衛則・罰則あり)は、報告体制と重篤化防止手順の整備・周知の2つ。どちらも文書化と周知で足りるため、企業の規模を問わず、すぐに着手できます。
  • 推奨(新ガイドライン)の中心は、WBGTの実測にもとづく管理と、環境そのものの改善です。基準値を超えるたびに休憩を増やす運用はいずれ生産性の壁に突き当たります。遮熱・断熱・換気・空調効率化でWBGTを基準値の内側に下げられれば、「休ませて守る」から「作業を続けられる環境で守る」へ進めます。
  • 暑さの原因は工場ごとに違います。輻射熱・設備排熱・空調効率・換気不足のどれが主因かを見極めてからアイテムを選ぶことが、無駄のない投資への近道です。

工場の熱中症対策には、一つのアイテムですべてを解決できるケースは多くありません。暑さの原因を正しく把握し、遮熱・換気・空調・設備効率化を組み合わせて対策を行うことが、作業環境の改善と熱中症リスクの低減につながります。自社に適した熱中症対策アイテムをご検討の際は、ぜひ堀口エンジニアリングへご相談ください。

【無料ダウンロード】工場の熱中症対策 法令対応セルフチェックリスト2026

本記事で解説した義務・推奨の対応状況を、○×で点検できるセルフチェックリスト(A4・全11ページ/全48項目・WBGT基準値早見表・スコア判定・補助金一覧収録)を無料でダウンロードいただけます。以下のフォームにご記入のうえ、ご利用ください。

本資料は、公的機関が公開している情報を参考に、当社での暑さ対策を検討した際に使用したチェックリストをもとに一般向けに整理したものであり、法令への適合性を保証するものではありません。実際の導入検討にあたっては、事業所の実情と法令について必ずご確認ください。