2023.10.27

宇宙ビジネスへ挑戦~航空機地上支援器材の製造ノウハウを転用~

宇宙ビジネスと聞くと、何を思い浮かべられるでしょうか。近年、国内では宇宙ビジネスについてのさまざまなイベントが開催されており、宇宙ビジネスに直接的に関わる企業だけでなく、農業・漁業関係者、政府、自治体なども多数登壇し、さまざまな視点から議論がなされるようになってきています。
当社においては、これまでも宇宙関連の新規製造品、修理メンテナンス等の依頼を受けていますが、今後の宇宙ビジネスの発展にさらなる可能性を感じており、最近開催されたSPACE LINK20239月 於:東京都文京区)、北海道宇宙サミット(202310月 於:北海道大樹町)に参加してきました。
世界的に宇宙ビジネスへの発展が進んでいることはすでに周知されていますが、日本でも力を入れて取り組んでおり、また宇宙ビジネスを進めていく環境にかなり適した国であることがわかりました。今回は、2つのイベントで得た情報を交えて紹介していきたいと思います。

宇宙ビジネスが飛躍的に成長

世界では目的に合わせた衛星開発がたくさん行われており、特に小型人工衛星の打ち上げはここ10年を比較すると80倍以上の実績を記録しています。小型人工衛星は、通信はもちろん、地球観測、宇宙探査に使用されており、特に地球観測においては、農業や防災減災、インフラ、都市計画などさまざまな活用方法の開発や運用が始まっています。例えば、スーパーの駐車場に出入りする車を観測し、店舗ごとの来店車数をデータ分析するなど、衛星画像を活用した情報は幅広く使用され始めています。

出典:BryceTech “Smallsats by the Numbers 2023”
https://brycetech.com/reports/report-documents/Bryce_Smallsats_2023.pdf

人工衛星を打ち上げる際には、大きなロケットに複数の人工衛星を集めて乗り合いのようなかたちで打ち上げられることが多いです(衛星開発企業とロケット打ち上げる企業は別の企業)。
しかし、大きなロケットでは、製作コストや時間が膨大にかかり容易に打ち上げることが難しいため、製造・打ち上げ費用、打ち上げスパンが素早く対応可能な小型ロケットの開発を民間企業が行っています。

また、人口衛星以外にも宇宙旅行のための有翼型ロケットや人工流れ星の開発なども行われており、宇宙を舞台にしたビジネスはさまざまな広がりを見せています。
このような宇宙ビジネスに取り組む民間ベンチャー企業へ、政府から今年9月に補助金として各社20億円を上限として補助金が交付されました。この動きからも、宇宙ビジネスの発展がさらに加速してくことが予想されます。

日本が宇宙ビジネスを引っ張っていく

北海道大樹町は、「世界で最もロケット打ち上げに向いた場所」と言われており、その理由について下記に紹介します。

①東と南が海上である

ロケットの多くは、東または北・南の打ち上げがほとんどです。
その理由として、、、
・東・・・地球は、西から東に自転しており、地球の自転エネルギーを利用し宇宙空間に到達しやすいため。
・北、南・・極軌道と呼ばれる地球観測に適した軌道があることからよく使用される軌道。
ロケットの打ち上げには、地上の安全を確保しなければならないことから飛行経路の下は海であることが良いと考えられている。

上記のことから、現在のロケット打ち上げに関して、東または南北への打ち上げが基本とされ、飛行経路の下は海となっていることが良い条件とされています。

②海路、空路が混み合ってない

ロケット打ち上げ時には、海路及び空路への調整が必須となるが、北海道大樹町は比較的どちらも少ない上に、地域住民の協力体制もできている。

③大樹町のある十勝は、晴天率が高い

十勝晴れと言われるほど、年間を通じて晴天の日が多く、ロケットの打ち上げ条件を満たす環境が作りやすい。

④港や空港からのアクセスが近い

他県・海外からの射場の利用がしやすい。

以上が、世界的に見ても北海道大樹町はロケットの発射場として好条件である理由です。
また、すでにロケットの射場としても40年の実績があるため、「世界で最もロケット打ち上げに向いた場所」と言われています。
 そして、2021年よりこの日本が生まれ持った地の利を生かし、世界の宇宙ビジネスの中心になるべく北海道大樹町の北海道スペースポート(宇宙港)は本格稼働が始まりました。
この北海道スペースポートでは、宇宙版シリコンバレー(世界的に見ても先進性がある研究開発拠点)の実現に向けて、ロケット発射場や研究・開発施設の整備・増設を行い、自治体、民間企業によって宇宙ビジネスのインフラを整える活動が行われています。

航空機地上支援器材の製作で得たノウハウを宇宙ビジネスへ転用

前章からわかるように、宇宙ビジネスの発展が加速していくことが予想されるため、当社でも適切に対応していきたいと考えています。
当社では、航空機用整備器材、機械加工・修理、プラントメンテナンスなど、幅広い領域での「設計/製造/修理」の技術が創業時より実績があります。現在の民間企業が使用できるロケットの発射場の設備はまだまだ整っている状況ではないということから、衛星・ロケット・宇宙港などの分野で地上支援機を含めたさまざまな課題を当社の経験と技術力で解決し、宇宙ビジネス市場の拡大に寄り添っていきたいと考えています。
中でも、「衛星分野」「ロケット分野」「宇宙港」での製造物や地上支援器材、また海外メーカー製品に対する日本でのサポート業務など視野に入れています。
下記に、当社の実績を紹介します。

・大型衛星横転装置(反転装置)

「衛星横転装置」は、当社が手がける宇宙関連事業の代表的な製品です。
巨大な衛星を横転・反転、回転させることにより、地上で整備や組立を行うことが可能になります。

 

・月面着陸船用台車及び関連機材製作

月面着陸船の組立や保管、移動をするための台車(ドーリー)や、月面着陸船に燃料タンクを取り付ける際に使用する治具を製作しました。月面着陸船のサイズに合わせたドーリーとすることで、無駄なスペースを必要とせず、最適な運用が可能になります。
また、下記Astroscale様資料ページのリンクから、当社が製作した【小型衛星用横転台車】についても写真で、ご紹介頂いておりますので是非ご覧くださいませ。
Astroscale様 資料ページへ

2023/11/15に日経電子版(有料版)に当社が製作した「小型衛星横転台車」が掲載されました。ぜひご覧くださいませ。
JAXAに1兆円「宇宙戦略基金」 日本のスペースX育成へ

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・様々な航空機用作業台

(左)航空機の尾翼まわりの点検・整備を行うための作業台で、当社で製作した最も大きい作業台となります。
当社最大の航空機地上支援器材(GSE)「尾翼整備作業台」

(右)油圧ポンプとシリンダーを使用した昇降・下降する作業台です。

また、大、小さまざまな作業台の製作実績があり、宇宙港に必要な地上支援器材の製作のご依頼をお待ちしています。

まとめ

私たちが普段ニュースで見かけるような宇宙関連の情報は、月の探査機やアルテミス計画のような有人宇宙飛行のような規模の大きいものなのでまだまだ宇宙は遠い印象でした。
しかし、今回のイベント参加によって、実は身近な存在になりつつあるということがわかりました。宇宙の定義は、一般的に高度100kmからと言われており、そのエリアのビジネスが急速に成長しています。現時点では地上で支援するための設備・機材がまだまだ不十分であることから、当社でも協力体制を充実させ日本が宇宙ビジネスの先駆者となれるようサポートしていきたいと思います。