2023.8.10

【現地出張工事】持ち出しが困難な製品に対しての、通り穴修理・再生について

穴内径の摩耗を再生する案件で、「移動式ラインボーリングマシン」を使用した仕事について紹介します。
主に軸受けや取付穴、通りの精度が重要な穴の摩耗、損傷を修理するために、肉盛り後の加工やオーバーサイズ加工で 使用する機材です。

移動式ラインボーリングマシンとは

移動が可能なラインボーリングマシンのことを、当社では「移動式ラインボーリングマシン」と呼んでいます。
主に、船舶や建設機械などの現地出張工事で使用しています。
この移動式ラインボーリングマシンの特徴は、回転駆動装置が持ち運びできること。
分解や持ち出しが困難な案件について現地出張工事で対応できます。
また、分割式なので搬入しやすく、加工する軸方向にはシャフトが入るので、そのスペースを確保できれば狭い場所でも作業が可能です。

通りの精度とは、2つ以上の穴の軸を一直線にする加工です。
使用用途によっては、「軸」と「穴」の関係で、0.01mm単位での精度が必要になります。
船や大型の車両は加工機械に載せることができないため、「移動式ラインボーリングマシン」を使用します。

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「移動式ラインボーリングマシン」での加工方法

「移動式ラインボーリングマシン」での加工方法には、大きく二つあります。
一つは、穴内径部に肉盛り溶接後、仕上げ寸法に加工する方法。
もう一つは、ラインオーバーサイズ加工、ブッシュ製作・挿入仕上げと呼ばれる  、穴内径を大きく削りブッシュを挿入後に仕上げ加工を行って寸法を出す方法です。

次のようなお客様のご要望を踏まえ、案件ごとに適した作業方法を提案します。
・オリジナルの形状に再生したい
・強度を上げつつ修理したい
・素早く直したい

造船や建設機械での加工事例

造船

造船関連では、修理だけでなく、新造船の  加工依頼もあります。
新造船の加工では、舵軸の穴加工やその他の精度の必要な軸穴の加工をします。
船本体は、製造過程ではセミサイズの穴(小さめの穴)で作られ、組立後に加工する場合や、穴に対してセミサイズのブッシュやカラーを入れ、組立後、正規の寸法へ加工します。

修理の作業内容をいくつか紹介します。
・フェリーの車両乗降用スロープヒンジ穴のラインボーリング
・フィンスタビライザーの固定穴のオーバーサイズ加工
・スパッド船(海底に杭を打つ船)のヤグラ固定穴オーバーサイズ加工
・プロペラ軸受けラインボーリング

難易度の高い事例では、アルミ船プロペラ軸受けのボーリング加工があります。
船体の材質がほぼアルミニウムのため、気温変化で船が膨張します。
そのため、芯出し作業は、船体温度が落ち着く深夜に行います。
高い加工精度が必要とされる上、船体温度と外気温度にも規定が設けられているため、限られた条件下での施工となります。
また、遠く離れた芯間でも正確な寸法での加工が必要なため、光学測定器を使用して機械の芯出し(位置決め)を行います。

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建設機械

建設機械の修理は、当社への持ち込み、引取り、または現地出張工事となります。
大型機材で運搬が難しいものや工期に余裕のないものに関しては、現地出張工事で対応しています。
主な作業箇所  は下記になります。
・ショベルカー;ブーム、アーム、本体ブーム取り付け穴、Hリンク、バケット
・ホイールローダー;フロント、リア連結部

#2 966F ローダー
これらの箇所が摩耗し穴のガタが増えることで、次のような危険があります。
・油圧シリンダーのパワーが正常に伝わらず、最悪シリンダーロッドが損傷
・ホイールローダーの、フロント・リアの連結部のガタは  、走行に問題が起き、ハンドル操作の際に適切に動作しない

穴の摩耗が大きくなると動作にも影響し、それ以外の部分にも余計な負荷がかかって損傷が拡大していくため、早急な対応をお勧めしています。

※2011,2012,2015年、パプアニューギニアでの現地出張工事を行っています。「移動式ラインボーリングマシン」を使用して、現地の森林事業会社で使用されている重機機材の軸受け部溶接肉盛りラインボーリングを行いました。  

#4 機械加工

トレーラー足回り

製鉄所で使用されるキャリアパレット車や大型トレーラー等の足回り部品の修理を行います。
アクスルシャフトやアクスルフレーム、イコライザー軸受け  のライン穴の修理となります。
足回り部品の穴ガタは走行中の振動が増え、足回り関連はもちろん、電装部品などにダメージを与えることもあります。
メンテナンスが不十分な場合、亀裂等で再生不可能になることもあるため、定期的なメンテナンスを実施し、走行時間で各部品を管理して修理することをおすすめします。

まとめ

「移動式ラインボーリングマシン」を使用した、精度が必要な穴内径の摩耗を再生する案件をご紹介しました。
応用範囲はさらに広く、便利に使用できる機材でもあります。
穴の摩耗によるガタ、長年の使用などで軸の通りがずれてしまった機材・設備の修理など、ご依頼をお待ちしています。